「25歳からは女の子じゃない」が炎上したのは「25歳からはババア」だからじゃないぞ

資生堂がネットで公開していたCMが炎上し、動画が削除されました。

そのCMのキャッチコピーは『25歳からは女の子じゃない』というもの。

これに一部の女性から『性差別的』『セクハラ』との意見が上がり、炎上したというのが主な流れなのですが、正直、何が問題なのかぴんと来てない人も多いのではないでしょうか。

 

確かに、『25歳からは女の子じゃない』というメッセージはいたって普通に見えます。

25歳は一般的に「子ども」という年齢ではないし、「批判する人は、25歳でも30歳でも女子のつもりなの」という意見があってもおかしくないと思います。

そんな人からみると、「またフェミニストが過剰反応している」という気分になるのも当然。

 

ただ、私はこのCM、クレームが来るのも当然だと思いました。

その理由は「25歳からは女の子じゃない」からじゃありません。

「24歳までは女の子扱いをされて当然」というメッセージが込められていたからです。

 

女の子扱いされるのは、うれしいことじゃない

CMで友人の25歳の誕生日を祝う女性たちは言います。

「(25歳からは女の子じゃないから)もうチヤホヤされないし、ほめてもくれない」「カワイイという武器はもはやこの手には、ない」。

彼女たちは社会人として働いており(続編CMは職場が舞台です)、『カワイイという武器』をふるう場所には、当然仕事も含まれます。

そのうえでこのCMでは、「24歳までは女の子でかわいかったから、仕事でちやほやされたし、ほめてくれた」と言っているわけです。

私生活についてはまだいいとして、今社会人として働いている24歳の私は、率直にこう思いました。

「そもそも会社が社会人の女性を『女の子扱い』することがおかしくない?」

 

『女の子扱い』にはいろんな意味があります。

「女の子が職場にいると華があるねぇ」は、若さ・容姿が優れた存在として扱われること、「担当が女の子じゃ頼りないから別の人呼んでよ」は若い女性ゆえに、頼りない存在として扱われること。

どちらにせよ、仕事の内容ではなく、年齢や容姿、性別だけで、その人を判断してしまいます。

 

私は、仕事を頑張っています。叱られることも多いですが、褒められることもあります。

ただ、その褒められる理由が、「君は女の子だから」「君は若くてかわいいから」という理由だったとしたら、とても悔しいです。

自分の仕事とは関係ないところで評価されるのは、まったくフェアではありません。

 

このCMが、完全にプライベートの話ならまだOKでした。合コンや習い事などが舞台なら、年齢や容姿で判断するのはよくあることです。

このCMがいけなかったのは『会社』を連想させてしまったこと。

前述のとおり、このCMの続編は職場が舞台であり、CMでも「ちやほやされないし褒めてくれない」というセリフの次には「下にはキラッキラの後輩」と続きます。

ここから導き出されるのは、日本を代表する企業が『若い女性は会社において女の子扱いされるもの』と断言した、というやばい事態です。

『性差別』『セクハラ』というクレームが上がった理由も伝わるかと思います。

 

しかもさらに問題なのが、このCMの登場人物たちが、その価値観を完全に受け入れ、「女の子じゃなくなるなら、さらにかわいくなろう」と結論付けたこと。

いや、違うでしょ。

今までかわいさに頼ってきたのを止めて、仕事がんばったり、内面磨いたりしようよ。

 

正直にいって、このCMを作った人は、リアルな女子会に参加したことがあるのか不思議で仕方ありません。

女子会だったら、「若い女ってだけで上司がちやほやしてくる」と誰かが言ったら「うわ、セクハラおやじきもい」で小一時間盛り上がります。

「25歳超えたら、女の子扱いされなくなった」には「やっぱ仕事で頑張んないとねー」で、スキルアップの話が始まります。

 

たぶん男性が思うより、女性は自分が『女の子扱い』されることを喜んでいません。

社会において女の子であることは、若くてかわいいだけの、未熟な存在であることとイコールです。

『こんな女の子じゃなくて責任者出して』『新しい担当者が若い女の子でさぁ…』

だから『女の子扱い』をプライベートならまだしも仕事の場でされるのは、正当な評価ではありません。

自分で望んだわけでもないのに女の子扱いをされ、一定の年齢(このCMの場合25歳)を超えると今度は一転、周りの態度が厳しくなる。

正直言って理不尽です。

そんな理不尽な評価に振り回されているというのに、CMの登場人物が「さらにかわいくなろう!」なんて不自然な結論になるのは、その背後にCMを作った人の偏った意見があるから、としか思えません。

 今まで仕事を一生懸命してきた人なら、女の子だからと特別扱いされたり、取引先に侮られた経験は一度はあるはずです。

 

もちろん、それを積極的に武器にしている女性もいるでしょう。CMでは「カワイイという武器」と表現されましたが、それを昔ながらの言葉で言うと、「女を武器にする」というやつです。

 

ただ、働く女性をターゲットとするCMで、女の子扱いは悔しいと感じる人、年齢に応じたレッテルを張られるのが不愉快な人が一定以上いることを、事前に想定してなかったのは明らかに企業の手落ち。

というか「働く女性を年齢や容姿によってジャッジする」というメッセージを、よりにもよってユーザーの99%が女性である化粧品のCMで発してしまったリスク意識のなさは、想像を絶します。

 

すごく当たり前のことを言うのは恐縮ですが、働いている女性を、年齢や容姿で判断するのは、とても失礼なことです。

いや、若さはいいです。

男性と同様に「新人」でくくるなら。

会社の部下に「新人にしては良い出来だった」とほめるのはオッケーでも、「女の子にしては良い出来だった」というのが絶対にダメなのは、誰でもぴんと来るでしょう。

それは、「新人で経験が浅い」ことと同じくらい、「女の子」であることはマイナスだと言っているからです。

 

『25歳からは女の子じゃない』は、一見正しいようで、その裏側には『今まで君のことを会社で『女の子扱い』していたし、これからもちやほやされるためには、かわいくなきゃいけないよ』というメッセージが込められています。

これは、クレームが来て、放送中止となっても致し方ないと言えるでしょう。